最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)795号 判決 1948年11月18日
主文
本件各上告を棄却する。
理由
被告人両名辯護人高橋正義上告趣意について。
しかし、少年法第七一條第一項には「第一審裁判所又ハ控訴裁判所審理ノ結果ニ因リ被告人ニ對シ第四條ノ處分ヲ爲スヲ相當ト認メタルトキハ少年審判所ニ送致スル旨ノ決定ヲ爲スヘシ」と規定している。その趣旨は、裁判所が審理した結果被告人等に對して所論のごとく保護處分をなすのを相當と認めた場合には少年審判所に事件を送致しなければならぬのであるが、被告人等に對して保護處分をするのが相當であるか否かは、事実審たる原裁判所が諸般の具體的事情を考慮して定むべきものであってその裁量權にのみ屬するところである。それ故所論は原審の自由裁量に屬する事項の非難に歸着するから上告適法の理由とならない。
被告人内海治康辯護人小田垣常夫上告趣意について。
しかし、強盗罪の成立には被告人が社會通念上被害者の反抗を抑壓するに足る暴行又は脅迫を加え、それに因って被害者から財物を強取した事実が存すれば足りるのであって、所論のごとく被害者が被告人の暴行脅迫に因ってその精神及び身體の自由を完全に制壓されることを必要としない。そして原審は、論旨摘録のように、被告人等が判示午前一時頃屋内に侵入し、被告人内海及び右佐藤はそれぞれ草刈鎌を、被告人田中はナイフを被害者久布白等に突付交々「静にしろ」「金を出せ」等言って脅迫し、同人を畏怖させ、その所有の現金三千百七十圓、腕時計、懐中時計、ライター等四十數點を強奪しと判示して、被告人等が社會通念上被害者の反抗を抑壓するに足る脅迫を加え、これに因って被害者が畏怖した事実をも明に説示して、手段たる脅迫と財物の強取との間に因果關係の存することをも認定しているから、これに對し刑法第二四九條を適用せずに同法第二三六條第一項を適用したのは正當であって、原判決には所論のように法律の適用を誤った違反はない。論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)
よって刑訴第四四六條に則り主文の通り判決する。
この判決は裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野毅 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 岩松三郎)